ドーベルマン:飼い方
犬の性質が昔とかなり変わって、家庭で飼うことに向いてきたといっても、やはり大型犬です。ちゃんと運動をさせて、躾をしないと手に負えません。
マンションなどの室内でも飼えますが、十分に運動をさせないとストレスがたまって問題行動を起こします。
頭の良い犬ですが、上下関係は子犬の頃から徹底して教え込むことが大切。飼い主を見てうなる、噛む、飛び付くなどの行為を放っておくと、攻撃性を助長し、成犬になった時の事故につながります。
いけないことをしたら、首をつかんで大きな声で叱る、鼻先を叩くなどして、わからせましょう。高い声は犬を興奮させるので、女性や子供でもできるだけ低く強い調子で一度だけ叱るのがポイント。ドーベルマンは警戒心が強く神経質でデリケートなので、しつこく叱ると逆切れして攻撃に出てしまうことがあります。
神経質を直すには、叱ったら三倍ほめてあげることと、飼い主がおおらかになること、それと、どんどん外に連れて行っていろんな人に触ってもらうこと。子犬の時にきちんと躾ておくと、大きくなってからは軽く命令するだけですみます。
ふだんの手入れはタオルで全身を拭くこと、日光に長時間当たると被毛が焼けて変色するので注意。短毛で寒さが苦手なため、とっくりセーターなどを着せてやると、日焼け防止と寒さ対策になる。また、比較的皮膚アレルギーが出やすいが、油分の少ないフードでリスクは軽減できる。
スラリとまっすぐな足。フローリングなど、床で滑る環境にあると、内股やO脚になってしまい、足を痛めやすくなる。室内で飼う場合は床には絨毯など滑らない素材を。関節はタコができやすいので、寝床にはタオルや毛布を敷いてあげる、馬油などの保湿クリームを塗りこむなどして保護を。
中年以降、また避妊手術後は肥満しやすいので注意を。体を横に曲げた時に、うっすらと肋骨が見えるのが理想的な肉付き。また、横から見て腹部が引き締まっているかもチェックして。
ドーベルマンを飼育するには手がかかります。
あのスタイルにするためには生後数日で尾を切って、生後二ヶ月くらいで耳を切って、その耳が立つまで平均四、五ヶ月。精悍な爪先立ちのスタイルにするためには、草地や石ころの上を走らせなくてはいけません。
普通の大型犬よりも、費用も手間もかかります。だからより深い愛情が必要になります。
最近は耳も尾も生まれたままの姿で飼うこともあるようです。
個人の好みですが尾はケージの中で振り回して傷付くことがあるため断尾した方がいいように思います。
また、個体差により垂れ耳がパタパタと耳穴を塞ぐことにより鼻から出血する場合もあるため断耳を推奨するブリーダーもあります。
ただ、世界的に見ても現在では動物愛護の観点から断耳・断尾を禁止にしている国も多くなっているため、そうしたことへ考慮していくことも必要でしょう。
性格は、すごい甘えん坊で飼い主が大好きでべったりくっついて離れない。おっかない顔でうんと甘えてくるところがたまりません。猪突猛進で人間で言えば腕白坊主。勉強のできる子よりも、じゃじゃ馬を育てる方が面白いのではないでしょうか。
ドーベルマンは、凛々しく、カッコイイ犬である。憧れから「いつかはドーベルマンを飼ってみたい」という思いを膨らませることは、決して悪いことではない。
でも容姿の憧れだけで、犬種の歴史や性質、飼育上の注意などについて勉強もしないで飼うのは間違い。高級車に憧れる感覚でこの犬を選ぶと、飼い主も犬も不幸になる。
イメージが先行しやすい。強そうでカッコイイ。そういう危険なイメージの犬を、意のままに従える満足感…特に男の人に多いようです。でも、結局飼いきれず、放棄されるドーベルマンが後を絶たないのです。
犬種図鑑によるとドーベルマンは「100年前にドイツのルイス・ドーベルマンという収税、野犬狩り、夜警などというキャリアを持つ男が、鋼の気性と優美なラインと無尽蔵のエネルギーを誇るガードドッグを作るべく、心血を注いで犬種改良した犬」とある。常に神経を張り詰め、警戒態勢をゆるめない性格を持ち、何者にも負けない激しい性格と体力のある犬を目標に作られた。
そうした犬種の特性を知らぬまま、安易に飼い始めてしまったら…?
ろくに散歩にも連れて行ってもらえなかった場合、足の裏が柔らかくて、道路を歩くと肉球が裂けてしまう時があります。
また、過剰に神経質な面は、幼い頃から散歩に連れ出して、社会性を身につけさせ、運動する機会を与えていれば、ひどくはならないはずです。
ガードドッグとして持つ元来の神経質な特性がマイナスに転じないよう、飼い主はあえて往来が見えない室内を提供したり、運動できる場所を用意したり、住環境を考えなくてはいけない。
闘争本能、縄張り意識が強いため、訓練に費やす時間やお金も重要だ。
噛みつき癖のあるドーベルマンの矯正は難しく、放棄犬の場合、殺処分される運命にある。
たしかにお金を出せば、犬は買える。しかし、誰でもアクセスを踏めばスピードが出る車と違い、ドーベルマンの能力を発揮させるためには、ワン・オーナーによる世話と躾と愛情が不可欠。飽きたといって売り払い、別の車に乗り換えるわけにはいかない。相手はマシンではなく、ガラスの心を持つ生き物なのなのだから。
動物愛護の先進国ドイツでは、犬の尾を切ったり、あるいは耳を縫い合わせて立てることは法律で禁じられている。それらはガードドッグであるドーベルマンが対峙した不審者に弱点である耳や尾を持たれないようにするためや、その容姿を見ただけで退散したくなるような強面の犬にするため、そして外見上の見栄えの良さのために行われてきた。
前述しましたが、耳に関しては縫い合わせた方が健康的には良いという意見もある。なぜならば、耳が垂れ下がって、耳を塞いでいると、運動をした場合に鼻血を出すことが往々に起こるからだ。麻酔をかけて切り縫い合わせるのだから、犬に残酷な行為を強いているのではないとの意見もある。しかし、耳が立っているだけで、ドーベルマンを恐れる人々がいることも事実である。この人たちは反対に、垂れ下がった耳のドーベルマンには親近感を持つようである。